在庫評価とは?評価方法、在庫評価損と対策について解説

在庫評価とは?評価方法、在庫評価損と対策について解説

在庫評価とは?評価方法、在庫評価損と対策について解説

倉庫でタブレット端末を手に持つ2人の作業員

在庫評価(棚卸資産評価)は、企業が保有する商品や原材料、仕掛品などの棚卸資産の金額を決算時点で評価・計算する会計手続きのことです。このプロセスは、企業の財務状況を的確に把握するために欠かせません。

本記事では、在庫評価の基本的な概念や経営に与える影響、さらに評価方法や在庫評価損への対策について詳しく解説します。企業運営において適切な在庫管理を行うためのヒントになれば幸いです。

目次

在庫評価とは何か

在庫評価とは、決算期末に残っている在庫(棚卸資産)に対して、その経済的な価値(金額)を算出・決定する手続きのことです。

在庫の資産価値は「数量 × 単価」で計算されますが、商品の仕入単価は時期によって変動します。そのため、「いつ仕入れた商品の単価を適用するか」というルールを決める必要があります。このルールに基づき、期末在庫の評価額を確定させる作業が在庫評価であり、正しい利益計算を行うための不可欠なプロセスです。

在庫評価が経営に及ぼす影響

在庫評価は単なる経理処理ではなく、企業の財務状況やキャッシュフローに直接的な影響を与えます。評価額が高くなるか低くなるかで、以下のような経営への影響が生じます。

税金の負担

在庫評価額の増減は、売上原価の計算を通じて最終的な利益(所得)に影響し、ひいては法人税などの税負担を左右します。

計算式は「売上原価 = 期首棚卸高 + 当期仕入高 - 期末棚卸高」です。つまり、期末在庫の評価額が高いと売上原価が安くなり、利益が増えるため、納める税金が高くなります。逆に、在庫評価額を低く見積もれば利益は圧縮されますが、税務署に認められた正当な方法でなければなりません。

キャッシュフローの圧迫

「在庫は倉庫に眠る現金」とも言われます。在庫評価額が高いということは、それだけ多くの資金が在庫として固定化されている状態を意味します。

また、前述の通り、在庫評価額が高く利益が多く計上されると、手元の現金が増えていない(在庫として残っている)にもかかわらず、税金は現金で支払う必要があります。過大な在庫評価は、納税資金の確保を難しくし、キャッシュフローを圧迫する要因となり得ます。

資産の適正な評価

貸借対照表(B/S)において、在庫は「棚卸資産」として流動資産に計上されます。 在庫評価を適正に行うことは、企業の資産価値を正確に株主や金融機関に示すために重要です。

例えば、市場価値が暴落している商品を高い取得原価のまま評価し続けると、実態とかけ離れた資産価値が表示され、経営判断を見誤るリスクや対外的な信用低下を招くおそれがあります。

在庫評価額とは何か

在庫評価額とは、決算日時点において企業が保有する在庫の総額(金銭的価値)のことです。

実地棚卸によって確定した「在庫数量」に、採用している評価方法(最終仕入原価法や移動平均法など)に基づいて算出した「単価」を乗じて求められます。この評価額は、貸借対照表の「資産の部」に計上されるとともに、損益計算書の利益計算の基礎となります。

正しい評価額を算出することは、適正な決算書の作成と納税義務の履行において必須となります。

2つの在庫評価方法

在庫の単価を決める際の評価基準には、大きく分けて「原価法」と「低価法」の2種類があります。

原価法

原価法とは、商品を仕入れた際にかかった金額(取得原価)に基づいて在庫を評価する方法です。期末時点での時価(市場価格)が変動していても考慮せず、あくまで「いくらで買ったか」を基準にします。

税務上、事前に評価方法の届出を行わなかった場合は、法定評価方法としてこの原価法(具体的には最終仕入原価法)が適用されます。計算が比較的単純で事務負担が少ないことが特徴です。

低価法

低価法とは、「取得原価」と「期末時点の時価」を比較し、いずれか低い方の金額を在庫の評価額とする方法です。一般的に、商品の価値が下がった場合に含み損を早期に損失として計上できるため、保守的な会計処理とされます。

時価が取得原価を下回った場合に評価損を計上できるため、節税効果や資産の健全化が期待できますが、時価の把握など事務処理は複雑になります。

取得原価の算出方法

原価法を採用する場合、「どの時点の仕入価格を使うか」によって以下の6つの計算方法に分かれます。

最終仕入原価法

期末(決算日)に最も近い日に仕入れた単価を、その期末在庫すべての単価として計算する方法です。

計算が非常に簡単で、多くの企業で採用されています。また、税務署に評価方法の届出をしなかった場合に自動的に適用される「法定評価方法」でもあります。
価格変動が激しい場合、実際の原価との乖離が大きくなる可能性がある点には注意が必要です。

個別法

商品一つひとつの仕入原価を個別に管理し、その価格で評価する方法です。宝石や不動産など、代替性がなく高額な商品に適しています。

個々の在庫と原価が正確に対応するため最も精度の高い方法ですが、大量生産品や一般的な小売商品でこの方法を採用するのは、管理の手間が膨大になるため現実的ではありません。

先入先出法(FIFO)

「先に仕入れた商品から先に売れていく」と仮定して、期末に残っている在庫は「最も新しく仕入れたもの」であるとして評価する方法です。

実際のモノの流れと一致しやすく、在庫評価額が直近の市場価格に近くなる特徴があります。物価上昇局面では在庫評価額が高くなり、利益が大きく出る傾向があります。

総平均法

「期首の在庫金額」と「当期に仕入れた総額」を合計し、それを総数量で割って平均単価を算出する方法です。

期間全体の平均値を出すため、仕入価格の一時的な変動の影響を受けにくく、評価額が安定します。ただし、期末になるまで平均単価が確定しないため、期中の原価管理には不向きな側面があります。

移動平均法

商品を仕入れるたびに、その時点での在庫残高と仕入額を合算して平均単価を再計算する方法です。

常に最新の平均単価が把握できるため、期中でも正確な原価管理が可能になります。計算回数が多く手計算は困難ですが、販売管理システムなどを導入している企業では最も推奨される合理的かつ実用的な方法です。

売価還元法

期末在庫の「売価(定価)」の総額に、原価率を掛けて在庫評価額を算出する方法です。

スーパーマーケットや百貨店など、取り扱う商品数が膨大で、一つひとつの原価管理が困難な業種でよく用いられます。種類が似ており、原価率が近いグループごとに計算を行うのが一般的です。

在庫評価方法の届け出の注意点

オフィスで書類記入をしているビジネスパーソン

在庫評価方法は企業が自由に選べますが、税務署への届出が必要です。ここでは、在庫評価方法に関する届け出の基本事項と注意点を解説します。

一度採択した評価方法は原則継続する

一度採用した在庫評価方法は、原則として継続して適用しなければなりません。これは利益操作(今年は利益が出そうだから評価方法を変えて利益を減らす、など)を防ぐために定められています。

正当な理由なく頻繁に変更することは認められておらず、変更する場合は、原則として3年以上経過している必要があります。

変更が認められるケース

評価方法を変更するためには、「棚卸資産の評価方法の変更承認申請書」を変更しようとする事業年度開始の日の前日までに、税務署長へ提出し承認を受ける必要があります。
変更が認められる主なケースは以下の通りです。

  • 合併や事業譲渡、事業分社化などにより経営体制が変わった場合
  • 取扱品目の種類が著しく変更された場合
  • 生産方式や販売形態が大きく変わった場合
  • 会計基準や税制の変更によって、使用中の評価方法が非適用となった場合
  • その他、正当な理由があると認められる場合

※どのケースにおいても、原則的には現在の評価方法を採用してから相当期間(概ね3年)が経過している必要があります

なお、いずれの場合でも評価方法の変更には、税務署への届け出が必要となります。手続きを行わずに評価方法を変更した場合、税務上の指摘を受けるリスクがあります。変更を検討する際には、内容や適用条件について専門家の助言を受けることをおすすめします。

※参考:棚卸資産の評価方法・短期売買商品等の一単位当たりの帳簿価額の算出方法・特定譲渡制限付 暗号資産の評価方法・有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の変更の承認の申請|国税庁

在庫評価損とは何か

在庫評価損(棚卸資産評価損)とは、在庫の価値が取得原価よりも下がった場合に、その差額を損失として計上することです。

会計上は比較的柔軟に認められますが、税務上(法人税法)では、評価損を損金(経費)として計上するための要件は非常に厳しく定められています。単に「市場価格が下がった」というだけでは、原則として税務上の損金にはできません。

損金として認められるケース

税務上、在庫評価損が損金として認められるのは、以下のような「特別な事実」がある場合に限られます。

区分 具体的な内容
災害による著しい損傷 震災、風水害、火災などにより、商品が著しく損傷した場合
著しい陳腐化 いわゆる型落ち。季節商品で売れ残ったものや、新製品の発売により今後通常の方法では販売できないことが明らかな場合
破損・型崩れ 輸送中の事故や保管中の変化により、品質が著しく劣化した場合
会社更生法などの適用 法的整理などにより、資産の評価換えが必要となった場合

※単なる物価変動による価格低下は対象外です。

※参考:法人税法施行令 | e-Gov 法令検索

在庫評価損を減らすための3つの対策

在庫評価損の計上は節税効果を生む一方で、利益を減少させるため投資家や銀行からは短期的な業績悪化として見られるリスクもあります。災害被害などのやむを得ない状況を除き、評価損の額は少ないに越したことはありません。在庫評価損が少ないということは、適切な在庫管理が機能している証明に他ならないからです。

ここでは、在庫評価損を減らす対策例をご紹介します。

入出庫や消費量を把握する

「何が、いつ、どれだけ動いているか」を正確に把握することが、在庫評価損を最小限に抑える第一歩です。

帳簿上の在庫と実在庫のズレをなくすために定期的な棚卸を行い、データの精度を高めましょう。動きの鈍い商品(滞留在庫)を早期に発見できれば、値引き販売などの対策を打ち、廃棄処分となる前に現金化が可能となります。

発注・補充を最適化する

過剰在庫は評価損の最大のリスクです。勘や経験頼りの発注をやめ、過去の出庫データや季節変動に基づいた定量的な発注を行いましょう。

適正在庫数(安全在庫数)を設定し、それを下回ったタイミングで発注する「発注点管理」などを徹底することで、必要以上の在庫を持たない体制を作ります。

在庫管理をリアルタイムで行う

月次の締め作業が完了するまで在庫状況が分からない状態では、対策が後手に回ります。 バーコード管理や在庫管理システムを導入し、日々の入出庫をリアルタイムでデータ化しましょう。

「移動平均法」などの計算も在庫管理システムが自動で行うため、常に最新の評価額と利益状況を把握でき、迅速な経営判断が可能になります。

在庫管理の課題を解決するならアラジンオフィス

適切な在庫評価と、評価損を出さないための在庫管理には、システムの活用が不可欠です。 株式会社アイルが提供する販売・在庫管理システム「アラジンオフィス」は、今回解説した「最終仕入原価法」や「移動平均法」など多様な在庫評価方法に対応しています。

在庫状況の把握はもちろん、滞留在庫のアラート機能や、ハンディターミナルとの連携による誤出荷防止など、在庫管理の課題を解決する豊富な機能を備えています。5,000社以上の導入実績から培ったノウハウで、貴社の業務効率化と適正な在庫管理をサポートします。

在庫管理やシステム導入に関するご相談は、ぜひお気軽にお問合せください。

まとめ

在庫評価は、企業の利益計算と納税額を決定する重要な手続きです。「原価法」や「低価法」などの評価基準、そして「移動平均法」などの計算方法にはそれぞれの特徴があり、自社の業態に合ったものを選択し、税務署へ届け出る必要があります。

また、在庫評価損のリスクを減らすためには、日々の在庫管理精度を高め、適正在庫を維持することが欠かせません。エクセル管理に限界を感じている場合は、在庫管理システムの導入を検討し、正確な数値把握ができる体制を整えることをおすすめします。



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